ジェイク・ギレンホール最高の演技で魅せる異色作『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』

ハリウッドでも近年では世代交代が進み、人種・国籍が入り混じった多種多様なスターがどんどん生まれています。そこで「若手で一番好きな俳優は?」と聞かれると、私の中で真っ先に挙がるのは他でもありません、ジェイク・ギレンホールです。

彼を初めて知覚したのは傑作ドラマ『遠い空の向こうに』。それから『ドニー・ダーコ』『ブロークバック・マウンテン』等の話題作に出演し続け、近年では『ナイトクローラー』での怪演で演技派としての地位も確立しております。

正統派イケメン俳優から演技派への脱却に見事成功しているジェイク。勿論その演技力やイケメンっぷりも好きですが、何よりこの人、脚本選びが非常にうまいと思います。「ジェイクが出れば間違いない」と言わせる説得力があります。

筆者が彼を特に好きになったのはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のサスペンス『プリズナーズ』から。非常に濃厚なサスペンス・スリラーで2015年度作品で最も好きな作品のひとつでもあります。ジェイクもアウトローな刑事を熱演!

『ゾディアック』『ミッション:8ミニッツ』『エンド・オブ・ウォッチ』等の良質なスリラー映画への出演が多く、脚本を吟味して出演作を選んでいるのでしょう。『サウスポー』はいろいろ言われてますがまあたまには…

さて、前置きが長くなりましたが、2015年度作品ながらやっと日本で公開されたジェイク・ギレンホール主演最新作『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』が個人的にあまりにも素晴らしかったのでこの場を借りて紹介させて頂ければ幸いです。

昨今のテレビドラマのようなタイトルですが、現代は『demolition』=意味は「取り壊し」。「なんじゃそりゃ?」と思えるタイトルですが、ちゃんと意味はあります。しかし本作はどんな作品なのでしょうか?その魅力を紹介したいと思います。

 

◆ただの「人生再出発物語」ではない、現代的な、だが説教臭くない「生き方を見つめ直す」話

▼あらすじ

ウォール街のエリート銀行員として出世コースに乗り、富も地位も手にしたデイヴィスは、高層タワーの上層階で空虚な数字と向き合う日々を送っていた。そんなある日、突然の事故で美しい妻が他界。

しかし、一滴の涙も流すことができず、悲しみにすら無感覚に自分に気付いたデイヴィスは、本当に妻のことを愛していたのかもわからなくなってしまう。義父のある言葉をきっかけに、身の回りのあらゆるものを破壊し、自分の心の在り処を探し始める…

現代的な生き方に疲れて空虚な毎日を送る主人公がそんな人生に無意味さを感じていろいろなことをして人生を見つめ直す… よくある”現代病”を扱った映画ではありますが、それはあくまでひとつの要素。この映画は一人の男を描いた「ヒューマンドラマ」でもありますが、何とも言えない不思議な作品です。

宣伝文句もある「”破壊する、取り壊す”ことで人生の大切なものに気づく… 」的な話と予想すると思いますが、意外でもそうでもなく、大した解決に至りません(むしろ劇中ではそれで何も解決しない)。

凡百の映画だとここで「人生で大切なものは何かやっと気づいたヒャッー!」てなるところを、現実ではそれでは何も解決しないことを、本作は丁寧にだが力強く伝えようとしています。過程としては勿論大事かもですが、それが目的ではない。

自暴自棄になってめちゃくちゃやることはやるんですが、どれもギリギリのところでセーブしているところがそれを物語っています(家も壊すけど実は全部壊してなかったり)。脚本だけ読むとどんな映画になるか分からない話ですが、よくぞこの作品の出演にジェイクが踏み切ったなあと賛辞を送りたい。

本作は「人生に大切なものはなにか」的なことが言いたいのでなく、「ただ一人の空虚な男の、人生をやり直す話」というところが個人的にとても好感が持てる理由なのでしょう。

死んだ妻やその両親、仕事、関わった人たち… あまり多くを語らず、生き方、そして生きたかった人生とは何だったのかを考えさせられる作品です。監督は『ダラス・バイヤーズ・クラブ』で名を馳せたジャン=マルク・ヴァレ。流石の演出と構成に思わず唸りました。

 

◆ジェイク・ギレンホール史上、最高の演技が作品そのものの価値を爆上げ

本作は何より、ジェイク・ギレンホールの名演が光ります。『ナイトクローラー』での怪演が話題を呼びましたが、正反対の感情に乏しい(ある意味ナイトクローラーも感情は乏しかったですが)エリートビジネスマンを過剰になり過ぎない抜群のバランスで演じきっております。

非常に難しい役どころをギリギリなラインで演じており、現代的な悩みを持つ青年の演技をやらせたら若手では今ジェイク・ギレンホールが一番うまいのでは?と思います。そういやそんな映画。役柄も多かった気も(ひと昔前だとエドワード・ノートンでしょうか)。

そして脇を固める俳優陣も皆うまい。化粧っ気のないナオミ・ワッツや、過激すぎない良い義父、クリス・クーパーも好演(『遠い空の向こうに』コンビ!)。その演技力を引き出す控えめながら人物をしっかり魅力的に映し出すジャン=マルク・ヴァレの演出は素晴らしいの一言。監督、俳優が非常に良いアンサンブルを作り出しているのがわかります。

ジェイク・ギレンホール出演作はそれなりに観てきましたが、個人的には本作が最高の演技だと確信しております。自分が監督だったら、「何も付け加えることがない。完璧だ!」と言うことでしょう。そのくらい良かったんです!

元々凄い好きな俳優でしたが、更に大好きになりました。ここまで脚本選びや監督の意図を汲み取るのがうまい若手俳優は他にいないのではないでしょうか?これは今後彼自身も監督業に進出するのは十分あると勝手に考えております。

とゆうかなんでこんな素晴らしい演技をしているのにアカデミー賞にノミネートされてないんだ!ッデム!

 

◆地味だけど、やっぱり地味。人は選ぶかもですが、凄く良い映画です。

普段あまり映画を観ない人が観ると「うーん普通?地味?」となる可能性も大いにあると思う本作ですが、ダメ過ぎることは絶対ないかと。筆者的にはとても心に残った作品なので、少しでも多くの人に観てもらいたい。ただのヒューマンドラマではなく、かすかにちょっとだけ、風変りなお話なんです。や、ただのヒューマンドラマかもですが。

その少しだけ変わったお話に、俳優の確かな演技と監督の手腕で”映画はここまで面白くなる”、ということを静かに気づかせてくれた本作を、私は嫌いになれるはずがないのです。いや、むしろ大好き!

あんまりやっている映画館ないので公開されてる間に是非チェックしてみてください〜 ジェイク・ギレンホール最高!!です!!!

新宿シネマカリテほかで絶賛上映中!カリテでは割とロングランしているみたいですのでお見逃しなく〜

http://ame-hare-movie.jp/

 

by 桑江 良輔

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