『人生タクシー』世界が認める名監督がタクシー運転手になった理由

2017年4月15日に日本で封切られるイラン映画『人生タクシー』

タクシーに設置したカメラを通しイランに暮らす人々のリアルな声を捉えたドキュメンタリーで、2015年ベルリン国際映画祭にて金熊賞と国際映画批評家連盟賞をダブル受賞しました。

公式サイト:http://jinsei-taxi.jp/

予告編の映像ではタクシーの窓ごしに明るい日差しに照らされたイランの街並みが流れていきます。

と、乗客のひとりが運転手にこう話しかけました。

「パナヒさんですよね?」

そう、速攻でバレているようですが、この運転手こそ本作の監督ジャファル・パナヒ氏です

監督自らタクシーのハンドルを握るなんて、本作の撮影手法は大胆でおもしろいものですが、実はのっぴきならない事情から生まれたものでした。

 

◆名監督で犯罪者?

「運転手に扮して映画を撮ってるんでしょう?」
「これはカメラですよね」

乗客から次々ツッコミが入るのを見ると、ジャファル・パナヒ監督はイランで顔を知られている様子。それもそのはず、パナヒ監督は世界三大映画祭での受賞歴に加え、母国イランでの逮捕歴を持つ名監督なのです

厳しい男尊女卑に翻弄されながらも懸命に生きようとするイラン女性たちの1日を描く『チャドルと生きる』、どうしてもサッカー観戦したいと男装してスタジアムへ向かう少女をユーモラスに描く『オフサイド・ガールズ』など、パナヒ監督の作風はイラン政府の現体制を批判するもの。

そのためデビュー作『白い風船』を除くすべての作品が、その高い評価にも関わらず、イラン国内で上映されていません。

2009年には反体制の宣伝活動で政治的混乱を招いたとして逮捕され、保釈されたものの軟禁状態となり、さらには映画制作に関わる一切の活動を20年間禁止されることに。

“映画をつくったら即逮捕”という状況に陥ってしまいます。

 

◆規制をアイディアに変える

しかしパナヒ監督は負けません。「映画でなければいいんだろう」と、自宅を舞台に軟禁状態の自身をカメラに収めたドキュメンタリーを制作します。つけたタイトルは『これは映画ではない』

お菓子の箱に隠して密輸された本作は、2011年カンヌ国際映画祭キャロッス・ドールを受賞しました。

今回の『人生タクシー』でタクシー運転手に扮した撮影手法も、『これは映画ではない』と同様に、規制をかいくぐるためのアイディアだったのです。

 

◆まとめ

芸術への規制が厳しいイラン。自由に作品を作れる環境を求めて国外に出て行くクリエイターは少なくありません。

しかし、現在は軟禁中&海外渡航禁止なので出たくても…という状況ですが、パナヒ監督は以前からイラン国内で映画を作り続けることにこだわっていたそうです。

ベルリン国際映画祭で審査委員長は『人生タクシー』について次のようにコメントしています。

ここには映画、観客、そしてイランに対する彼の溢れんばかりの愛情が詰まっている
http://openers.jp/article/892521

母国イランを思い、政府という“剛”にアイディアという“柔”で立ち向かい続けるジャファル・パナヒ監督。
まだ観たことないという方、近日公開の最新作でその魅力に触れてみませんか?

公式サイトhttp://jinsei-taxi.jp/

 

by かぼちゃ

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