なぜ美食ドキュメンタリー作品の登場人物は辛辣なキャラクターばかりなのか?

寒くなる昨今、暖かい食べ物を身体が欲しますね。ある意味「食欲の冬」でございます。

そんな「食」を扱った映画も毎年いくつか公開されていますが、ここ近年だとジョン・ファブロー監督シェフ 三つ星フードトラック始めました』が記憶に新しいですね。

この映画では主人公に食ってかかる辛辣なグルメ評論家が登場しますが、グルメを扱った作品には似たようなキャラクターが多く見受けられるように思えます。それはグルメを題材にしたドキュメンタリー映画でも同様。

ここ近年優秀なグルメを題材にしたドキュメンタリー映画が多く発表されておりますが、そこで先述した観点も交えて今回いくつかご紹介させて頂こうと思います。全て美味そうに観えまくりなのでお腹を空かせている方はくれぐれもご注意を…

 

◆美食ブロガー vs 高級料理レストラン99分、世界美味めぐり』

 

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© 2014 B REEL. All Rights Reserved.

 

公式サイト:http://99bimi.jp

原題はTHE FOODIES本作はミシュランガイドの3つ星をとったレストランを制覇しようとする美食ブロガーたちがひたすら高級料理を食べまくる話です。

その面々もレコードレーベルの元オーナーのスティーブ、シェル石油の元重役のアンディ、スーパーモデルのアイステ、タイの金鉱会社の御曹司のパーム、香港で働いたお金を貯めて高級料理を食べ歩くケイティと実に個性的。

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© 2014 B REEL. All Rights Reserved.

映画では様々な高級料理が登場しますが、それらを謙譲するような内容なのかと思ったらそうではありません。

ミシュランといってもどんなお店なのか知らない庶民の僕としては、食事そのものよりも、この作品に登場するキャラクターたちの存在とそのコメントが辛辣かつきっと的を得ていることにタイトルと内容の違和感を感じました。

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FOODIES=美食ブロガーたちはほとんど荷物を持たずに(撮影のために手荷物は写していないだけかもしれませんが)カメラとスマホを片手に移動しています。

おそらく許可も取られているはずですが、高級レストランでもバシバシ写真を撮影しています。このあたりは食の情報発信力としても個人の方が拡散していく可能性が高いのでしょう。

この美食ブロガーたちにターゲットされたレストランとシェフの立場を考えると、ミシュランの覆面調査員よりこの面々が要注意人物なのかもしれない様子はこの映画の中でも語られています。

トラベラーたちにとって「食」=「旅」。それは人生の目的でもあり、食べるために旅をすることが生きることにつながっています。食べること・作ること・食を語ることは普遍的なライフ・イズ・ジャーニーなのです。

しかしながら情報伝達手段や移動手段も発達したことによって、料理も料理人もボーダレスな影響を及ぼしていることがより感じられます。

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ちなみにヨーロッパではFOOD and TRAVEL MAGAZINという雑誌が有名であったり、NetflixChef’s Table」も多くの視聴者数を伸ばし続けていて、食とメディアの繋がりは世界のレストランに影響を与えています。

これらを観ると、日本のバラエティ番組で紹介される取材番組とは制作予算の規模やマインドが明確に違うことを痛感します。

 

◆ストイックな人生と哲学『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』と『二郎は鮨の夢を見る』

2013年に日本でもプチヒットした『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』は皆様ご存知でしょうか。本作は料理を作る(開発する)側の視点で制作されております。

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(C)2010 if…Productions/BR/WDR Food Photo©Francesc Guillamet

公式サイト:http://starsands.com/elbulli/

スペインのサンセバスティアンで生まれた分子料理は科学的にレシピを分析して、人間の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)を刺激する革命的な料理法です。

この料理法を生み出すまでのプロセスを淡々と写し撮っていきながら、エル・ブリの創設者・オーナーシェフのフェラン・アドリアの料理オタクぶりと極めて異色な料理とのギャップを感じる内容になっています。

すでにこの「エル・ブリ」は閉店してしまっていますが、このレストランで働いていたスタッフたちは今では世界中の国でお店を開業したり、新作料理の開発をしているそうです。

アメリカのBOX OFFICEで意外にもヒットした『二郎は鮨の夢を見る』も同様の視点から描かれており、ドキュメンタリー映画は様々な視点で切り取られ、見方が変わることも魅力であると言えるでしょう。

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Copyright (C) Transformer.Inc. All Rights Reserved.

ハリウッドのセレブたちも足繁く通う銀座の名店「すきやばし二郎」にスポットを当てた本作も鮨職人の二郎さんの生き方や考え方が作品のトーンを作っています。

公式サイト:http://jiro-movie.com

本作は、まさしく鮨を刀に置き換えた「鮨のサムライスピリットムービー」と断言できるでしょう。

 

 

◆なぜ日本の映画館は「せんべい」ではなく、「ポップコーン」なのか?

さて、筆者は映画館で美食ドキュメンタリー映画を鑑賞しながらポップコーンを食べている庶民の一人ですが映画館ではポップコーンが当たり前のように販売されております。

これもアメリカ文化の影響があっての結果ではありますが、トウモロコシの開発と加工技術とコストが映画館に適しているということもあったようです。

詳細はこちら→「なぜ映画館でポップコーンを食べるようになったのか?」http://goo.gl/jTzpB3

日本の映画館なら「おにぎり」や「せんべい」でも良い気がしますが、床に食べたせんべいのかけらが落ちた時の処理や管理する設備が必要なのでコストと見合わないので難しいという状況は伺えます。

たぶん、ポップコーンを食べる目的で映画館に来る人はいないと思います。パソコンやテレビの前でもポップコーンは食べれますし。

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それゆえ、その場所でしか提供されていない料理を食べるために、住む場所から離れた場所にある高級料理のレストランを目指して旅をするということはわからないわけでもないです。

映画もただ映画を観たいだけで映画館に行くわけもなく(そういう人も少なくはないですが)、すでに観たいと思った作品を決めてから映画館に足を運ぶのが大多数でしょう。

そこで食をテーマにした作品は宣伝する側もあの手この手で映画館に足を運んでもらうために様々な「仕掛け」を行います。「食」をテーマにした映画は「仕掛け」をしやすいのです。

サードウェーブ・コーヒーのカルチャーをドキュメントした映画『ア・フィルム・アバウト・コーヒーは映画館のロビーで劇中に登場する淹れたてのコーヒーを焙煎したり、世界中のステーキをテーマにした『ステーキ・レボリューションではステーキ屋さんとコラボしてイベントしたり、映画とリアルを結びつけて企画を展開しております。

ア・フィルム・アバウト・コーヒー

 

ステーキ・レボリューション

 

◆頑固な料理人(監督)と名店料理(映画)の関係

少し話がそれましたが、ここで筆者が言いたいのはこだわりのある作品には何か得体の知れない魅力があり、そして何かを喪失していることが多いという事です。それは料理にも映画にも同じことが言えるのではないでしょうか。

味がうまい店がイケてる店として全てが繁盛するわけではなく、不味いけど印象に残るお店の方が繁盛することもあります。その要因は99分 世界美味めぐり』に出てくるような、広告スポンサーに何の気兼ねなく素人の本音が口コミになって人気が出ることにあると言えるでしょう。

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▲頑固な上に更に偏屈なオヤジだけど魅力炸裂の『グラントリノ』のイーストウッドも正にそれかも

低予算のホラー映画を歴代の監督たちがヒットさせたように、映画も同じで如何に印象に残る映画を作れるか。

決して見栄えが良くない店でも頑固な料理人(=監督)が作った料理(=映画)はなぜか癖になり場合が多いですが、美食ドキュメンタリー映画の登場人物に好印象のキャラクターが出てこない理由はそこにあるのかもと思うのでした。

 

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▲日本を代表するグルメ辛辣キャラといえばこの人。グルメモノに頑固オヤジは不可欠なのです!

 

書いた人:徳武英章

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映画やドラマを中心に複数の宣伝プロモーションに携わり、東京国際映画祭の関連企画で映像業界の人材育成を目的としたコンテンツマーケットやマッチング事業など延べ1000人以上のクリエイターや業界関係者のネットワーキングイベントをプロデュースする。

現在は経済産業省、文化庁、観光庁などの映像産業振興を目的としたコンテンツサポート事業を担当。映画、アニメ、TVドラマのストーリー分析・評価・開発及びグローバル・マーケティングの面からコンテンツを幅広く販売促進するための新たな流通網を開拓している。

徳武英章Twitterアカウント

 

 

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